村上龍 音楽の海岸 Returns! 4

 村上龍「音楽の海岸」最終章、病弱の妹が兄ケンジに云うセリフです。「生きていく希望っていうのは、他の誰かへの働きかけと、その誰かからの反応だからね。他の誰かからの自分への働きかけと、自分の反応じゃ希望にならないから」。

 こう自ら言い切れる妹は、希望を持ち希望を信じて生きている点で、少なくとも弱者ではないですよね!

 そしてもうひとつ、「音楽のすべての要素は、他の誰かへの働きかけと、その誰かの反応だから。音楽はこの国にはない。この国は生きていく希望を必要としていないってこと。」というセリフがあります。いつからか音楽が嫌いになりどんな音楽をも聴こうとしないケンジという人間は、希望を必要とせず生きているということになりますよね!

 頭の回転が早く、度胸もあり生き生きと描かれていたケンジも、最終章ではその輝きを完全に失っており、一方で、純粋で明朗、想像力豊かな妹の存在は希望そのものであり、この物語の唯一の救いになっています。